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そこのみにて光輝く 綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉の名演、しかし閉塞感満載

映画 『そこのみにて光輝く』を見ました。
とにかく不幸のオンパレード・・・豊かな時代、取り残された地方都市とそこに住む底辺の若者の悲しい青春(・・・と言っていいのか判らないけど)を描いた文芸作品です。
貧困、犯罪、刑務所、強姦、売春、不倫、病、死etc...etc...。
落ちるところまで落ちればあとは這い上がるだけかと思ったけど、そんなんじゃなく、一筋の光が吹き飛んでしまうような負の連鎖で、その底辺の中での人の強さと弱さを巧みに描いている純文学的な良作だと思いました。

仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知り……。--cinema today



達夫(綾野剛)は、ある事故を境に仕事を辞め、毎日パチンコと酒のプー太郎生活。
ある日パチンコ屋で前科者だが人なつこい拓児(菅田将暉)と知り合う。
拓児に「家に遊びに来い。」と誘われてついて行くと、周囲から取り残されたようにあるみずぼらしいバラック小屋が・・・そこが拓児が両親、姉と住む家。
そこで拓児の姉、千夏(池脇千鶴)と出会う。


この千夏と拓児の家庭には、脳梗塞で寝たきりなのに異常性欲の父親がいて、母親は介護で疲れている。
貧困というより極貧です。
千夏は家族を支えるために、体を売ってまで生活費を稼いでいる、という過酷さ。
また、人を刺して仮釈放中の身である拓児を雇い入れている社長(高橋和也)に半ば脅される形で、社長の愛人になっている。
達夫にも不幸な過去があり自堕落というか厭世的に生きているわけだけど、千夏が今抱えている事の過酷さとは比べものにならないなぁ、と
千夏は街を出たいと思っていても家族を捨てることは出来ず、全てを諦めて今をただ懸命に生きています。


一方達夫は辛い過去にとらわれたまま世捨て人のように生きています。
過去に囚われて自堕落に生きている「よそ者」と、街に囚われて今現在が生きるため必死な「土地の女」が惹かれ合うのも当然のような気がしたし、「よそ者」に街から出してほしいと期待してしまう気持もよく分かるような気がしました。


主役の2人も素晴らしいのですが、脇役まですべて素晴らしいです。
印象に残ったのが、拓児を演じた菅田将暉さんと、社長を演じた元ジャニーズ高橋和也さん。
本当に陰鬱で救いがないようなストーリーで、登場人物も陰鬱な人ばかりの中、拓児の若さゆえの明るさと純粋さとバカさはある種の救いでした。
「達夫!達夫!」ととちょこまかとまとわりつくのもかわいくて、愚かさもなんだか憎めないキャラクターでした。
不味そうな炒飯やカレーを美味しそうに食べるシーンがあるのですが、食べ方で育ちが判るようなお芝居は惚れ惚れしました。
っていうか、この作品でファンになり色々見ていますが、作品によって人相まで変わっちゃうので、最初誰だか分からないほど役作りが凄いです。
あと高橋和也さんが演じる社長のギラついた目が気持悪く(褒めてます)、達夫の死んだような目と対照的でした。
こちらも惚れ惚れする鬼畜っぷりで名演だと思いました。


原作は函館出身の作家、佐藤泰志の小説。
何度も芥川賞や三島由紀夫賞候補になりながら賞には恵まれず、41歳の若さで自死。
彼の死後、小説は絶版になっていたが、『海炭市叙景』の映画化で再評価されているようです。
何冊か読んだことがありますが、バブル経済で日本が豊かになったのに、それに取り残されてしまった故郷函館を描き続けました。
バブル絶頂期の日本で、このような作品が描かれていたことにまず驚きました。
当時は村上春樹、山田詠美、村上龍などがもてはやされていた時代だったので、彼のような土着的な作品が幾度と候補になりながら賞と無縁だったこともうなずけます。


映画では現代の設定になっていますが、今や日本全国で地方都市が疲弊しており、違和感はなかったです。
そして、「貧困層のどうにもならない諦め中のほんの僅かな希望はあったのか?」
私はほんの僅か希望すら吹っ飛んでしまうほど、千夏、拓児の人生はこの先も過酷だと思いました。
希望がよそ者である達夫次第だなぁ、と感じ、それもまた切ない話しだなぁと思いました。



オール函館ロケ。
公式サイトのこちらにロケ地MAPが掲載されています。





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