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海炭市叙景 地方都市の疲弊と苦しみを描く



原作は41歳の若さで自死した佐藤泰志の同タイトル短編連作集で未完の遺作です。
バブルで日本中が浮かれているとき、バブル景気から取り残された地方都市を描き続けた作家で、「海炭市叙景」の映画化にともない、再評価された小説家です。
元々は「冬・春・夏・秋」なら成る36篇の短編連作集の予定だったそうですが、自死により半分の「冬・春」で終わってしまいました。
その18篇の短編連作集のうちの5篇「まだ若い廃墟」「ネコを抱いた婆さん」「黒い森」「裂けた爪」「裸足」をオムニバス映画にしています。
海炭市は架空の街ですが、小説を読むと佐藤氏の故郷である函館であることが明らかです。

北国の小さな町・海炭市の冬。造船所では大規模なリストラが行われ、職を失った颯太(竹原ピストル)は、妹の帆波(谷村美月)と二人で初日の出を見るため山に登ることに……。一方、家業のガス屋を継いだ晴夫(加瀬亮)は、事業がうまくいかず日々いら立ちを募らせていた。そんな中、彼は息子の顔に殴られたようなアザを発見する。


①まだ若い廃墟
造船所の大規模なリストラで仕事を失った兄(竹原ピストル)と、そんな兄を陰ながら支える妹(谷村美月)の物語。











②ネコを抱いた婆さん
地域開発に伴う立ち退きを拒む老婆(中里あき)と市役所職員(山中崇)の物語

③黒い森
妻の浮気と会話がない息子との家庭生活に悩む、プラネタリウム職員の男(小林薫)の物語

④裂けた爪
事業が上手くいかない上に妻の子供への虐待に苛立つ若社長(加瀬亮)の物語


⑤裸足
都会に出た息子と断絶状態である市電の運転手(西堀滋樹)の物語


映画では現代に置き換えられていますが、地方都市の苦しみや怒り、閉塞感、苛立ちが描かれているのは同じで、各エピソードは小説に忠実な内容です。
海炭市で同時期に生きている人々の営みが粛々と描かれています。

そういうわけでかなり陰鬱だし、函館の美しい景色ではなく、とにかく寒そうで冷え冷えとする景色も一層暗くさせます。
ただバブルで浮かれていた頃と違い、バブルが弾けてから失われた20年という閉塞感のある時代を生きているわけです。
バブルの頃は地方都市の問題だったことが、今や日本の問題となっていてるが故に、共感できる映画だと思います。
生まれも育ちも東京、という人にとってはもしかしたら分かりにくい映画かもしれません。

映画ならではの手法での演出もあります。
オムニバス映画だと、別々の物語に登場する人たちがどのように絡んでいくか、というところが楽しみだったりしますが、この映画の場合はちと難しかったのかも。

ロケ地は北海道函館です。
こちらにロケーションマップがあります。
http://www.hakodate-fc.com/0313.html



○函館山

初日の出を見に兄妹が訪れた場所



○ 十字街電停

引用:Wikipedia
登場人物たちが乗った路面電車の駅
住所:北海道函館市末広町8-6先



○函館朝市
男達がストライキの噂話をしたり、老婆トキが漬物を売っていたシーン
住所:函館市若松町9番22号




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